放送日:2006年2月1日
あらすじ
公式
夜。警視庁を後にする杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)。その脇を、捜査一課を乗せたパトカーが通り過ぎて行く。続く鑑識の車には、携帯電話を掲げて見せる米沢守(六角精児)。電話でひそかに情報を伝えるという右京へのサインだ。たまきの店で一杯やろうと考えていた薫は、ちょっとがっかりしつつも、右京とともに事件現場へ赴くのだった。
現場は高級住宅街。その一角にある五島邸の主婦、香苗(栗田よう子)が、自宅リビングで絞殺体となって発見されたのだ。室内は足の踏み場も無いほどの散らかりよう。片付け下手だったのか、漫画本や鉄道グッズ、菓子の空き容器などが散乱し、何かが盗まれていたとしても一見では分からないほどだ。
第一発見者は夫の秀宣(遠山俊也)。彼によれば、香苗は数日前から風邪をひいていたという。ごみ箱には丸めたティッシュが山となり、遺体のそばにはマスクも。右京は、そのマスクに付着した数本のグレーの毛に注目する。五島家でペットは飼っていない。鑑識にかけると、マスクの毛は“チンチラ”と判明する。毛皮に使われる小動物で、香苗の体からも検出された。しかし、現場で毛皮類は見つかっていない。犯人が持ち帰ったか、あるいは着用していたか…。翌日、右京たちは香苗のミセス仲間、竹下弥生(野村真美)の家を訪ねる。リビングにはちょうど、弥生からセレブの心得を学んでいるというミセスたちが集まっている。コート掛けには毛皮付きのコートが3着。香苗はミセス仲間の一人、仁科世理子(舟木幸)の紹介で、ここへ来るようになったという。どんな人だったのかと聞かれ、口ごもる世理子たち…。
竹下家の次に、右京たちは世理子の家を訪れる。そこで右京たちは、世理子が弥生からもらったという歴史ものの磁器を目にする。祖父の思い出の品というその磁器を、弥生は気前よくくれたという。世理子に限らず、弥生はいろいろなものをミセス仲間にあげていたらしい。特に香苗は、弥生の好意に漬け込み、何でもかんでももらっていたという。ヘレンドのシュガーポット、バカラの花瓶、アンティーク時計やネックレスなどの装飾品、リモージュのデミタスカップなどなど、もらい過ぎと言われても仕方がない。だが右京は、弥生が“あげ過ぎている”と考える。
「欲しい」と言われると、断れない性格の弥生。その真意を探ろうと、右京たちは再び竹下邸へ向かう。弥生はちょうど、毛皮のコートを着て出掛けるところだった。「チンチラでしょうか?」。ミセス仲間3人の毛皮からは、チンチラの毛は検出されなかった。しかし、問いかける右京に弥生は、ミンクだと答える。持っている毛皮はこれだけだとも。「私も欲しいですねぇ」と右京。すると弥生は、母から譲り受けたものと言いながらも、その場で毛皮を脱ぎ、右京に差し出すのだった。「物に執着してはいけない。私は心に決めていますの」。そう言い切る弥生の脳裏に、少女時代の思い出がよみがえってくる。弥生の消しゴムを欲しがる友達。首を振って素っ気なく断る弥生…。
「もらう側とあげる側、どちらの気持ちもよく見えませんねぇ」。右京と薫がぼやく。「ママは何でもあげちゃう」と娘が泣いても、あげることを止めない弥生。もらっていた香苗も、あの乱雑な部屋でものを大事にしていたとは思えない。案の定、香苗は弥生からもらったものをフリーマーケットなどで売っていたという。その中には、弥生の母の形見という毛皮の襟巻きも含まれ…。
ネタバレあり
- 五島香苗が自宅で絞殺体で発見される。現場に向かう米沢を見掛け、右京と亀山も捜査に参加。右京は香苗のマスクに付いていた毛に着目。調べるとチンチラと判明したが、現場にチンチラの毛皮は残っていなかったという。
- 香苗が生前付き合いのあった竹下弥生の家に行くと「セレブ仲間」が集まっており、一緒に話を聞く。解散後、香苗を竹下に紹介したという仁科に話を聞くと、竹下は家にある高級品も気前よくくれるが香苗はねだるようなことを言って何でももらっていたという。
- 弥生が娘のさつきを迎えに行くと、友達にポーチをせがまれており、弥生は友達にあげさせる。さつきは毛皮の帽子(弥生の物だがそのうちさつきに譲る予定)を「預かって、ママは何でもあげちゃうから」と右京に預ける。
- 香苗が竹下からもらった物について秀宣(香苗の夫)に聞くとほとんど見たことないが毛皮の襟巻きはしていたがどこにあるかわからないという。
- 仁科に「香苗はフリーマーケットで竹下からもらった物を売ってたんじゃないか」と聞くと認め、「彼女を紹介したことを後悔したので竹下さんに話して詫びた」という。また、チンチラの襟巻きを売ったかどうかは知らないという。
- 右京と亀山は弥生に「預かった帽子に香苗に付着していたのと同じチンチラの毛が付着していた、持っているはずの毛皮の襟巻きを拝見したい」と言い、弥生は「子どもの頃消しゴムが欲しいと言われて断ったらその子は消しゴムを万引きして捕まった揚げ句自殺した、そのせいで欲しいと言われたら断れなくなった」と自身のトラウマとなった出来事を吐露。チンチラの襟巻きも一度は香苗に譲ったがフリーマーケットで売っていると聞いて母の形見だから返してほしいと頼んだが「欲しいならお金払って、私はあなたみたいな人種が嫌い、あなただって本当はこっちのこと見下してるんでしょ」と断られたためもみ合いになって首を絞めたことを認める。そして襟巻きを証拠として渡すと、右京は「この襟巻きは凶器としては太すぎる、これがマスクの上にかぶさって一時的に窒息状態になったのは事実だろうが絞殺痕とは一致しない」と言う。
- 仁科の家に行き、デコイチのプレートを預かって遠山の家へ。壁の日焼けしていない部分に合わせるとピッタリで、「香苗が300円で売った」と説明すると遠山は「オークションに出せば100万はする」と興奮。それに対して右京は「それで殺したんですか」と指摘。秀宣は「妻は私が帰宅していた時には死んでいた」と反論するが、右京は「一時的に気を失っていただけじゃないか、意識を取り戻した奥さんは何をされたかあなたに話したのではないか、首を絞めて奥さんを殺害した後時間を見計らって帰宅して第一発見者を装った」と推理を披露。そして「凶器は事件の夜あなたが締めていたネクタイ、コレクターズアイテムだがなぜかあの夜あなたは締めていた、殺した後他のネクタイと並べるとよれよれになっているのが目立つため自分で締めたのではないか」と指摘し、ネクタイを鑑識に回そうとすると、香苗が秀宣のグッズをごみ扱いした上に勝手にフリーマーケットで安く処分したことを知って逆上して殺したことを認める。
- 弥生は不起訴となる。
キャスト
水谷豊:杉下右京
寺脇康文:亀山薫
高樹沙耶(益戸育江):宮部たまき
川原和久:伊丹憲一
大谷亮介:三浦信輔
山中たかシ(山中崇史):芹沢慶二
山西惇:角田六郎
六角精児:米沢守
野村真美:竹下弥生(セレブ)
遠山俊也:五島秀宣(鉄道マニア)
栗田よう子:五島香苗
舟木幸:仁科世理子(セレブ仲間)
市瀬理都子:相馬弘美(セレブ仲間)
中帆登美:山路悦子(セレブ仲間)
志水正義:大木長十郎
高田恵夢:ユカ(バレエ教室でさつきのポーチを欲しがる子)の母親
久保田龍吉:小松真琴
木村茜:竹下さつき(弥生の娘)
松本隼輔:仁科の息子
渡邉奏人:仁科の息子
外島千夏:ユカ(バレエ教室でさつきのポーチを欲しがる子)?
杉山りん:竹下弥生(幼少時代)?
松元環季:消しゴムを欲しがった弥生の友達?
ロケ地
劇中の場所 | 撮影場所 |
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冒頭で右京と亀山が現場に向かう米沢とすれ違った場所 | 東映通り[地図] |
五島宅 | スタジオプレステージ 哲学堂スタジオ |
門倉陶子バレエ団の入っている建物 | 劇団ひまわり[HP] |
<撮影場所ごとのまとめ>
東映通り:冒頭で右京と亀山が現場に向かう米沢とすれ違った場所
スタジオプレステージ 哲学堂スタジオ:五島宅
劇団ひまわり[HP]:門倉陶子バレエ団の入っている建物
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