「岐阜県保険医協会が寿命に関する調査結果を公表 開業医は長生きできない? 死亡時年齢は70.8歳」という記事を見つけまして。
下記の引用は無料部分だけで、僕も無料部分しか読んでいませんが、それだけでもおかしいと思う点がいくつもあるので指摘していきます。
記事の内容(無料部分)
岐阜県保険医協会が実施した調査で、開業医の死亡時平均年齢が70.8歳と短く、特に60歳代の死亡割合が34%と多いことが明らかになった。同協会会長の浅井徳光氏は「長生きできない背景には、勤務医時代からの過酷な労働がある」と指摘、「開業医の働き方改革も急務」と訴えている。
同協会副会長の永田正和氏によると、今回の調査は「開業医は厳しい労働環境にあり、早死にする人も多いのではないか。協会会員の死亡時年齢を調べてはどうか」という会員からの提案がきっかけだった。これを受け、2008~2017年の10年間に、岐阜県保険医協会を死亡退会した85人について、死亡時年齢を調査した。内訳は、医科会員が60人、歯科会員が25人、男性が76人、女性が9人だった。
集計の結果、死亡時平均年齢は70.8歳だった。「この結果には本当に驚いた。あくまでも参考値だが、厚生労働省の統計にある死亡時平均年齢(2015年)は、男性が77.7歳、女性が84.3歳であり、明らかな差があった」(浅井氏)。
また、年齢別死亡数を見ると、60歳代が29人(34.1%)と最も多く、70歳代が19人(22.4%)、80歳代が17人(20.0%)と続いた(図1左)。厚労省の年齢別死亡数(図1右)では、80歳代にピークがあり、90歳代、70歳代、60歳というパターンだった。「開業医の場合は、ピークが若い年代にシフトしており、明らかに異なっていた」(永田氏)。
「寿命」の計算方法を理解していない
見出しに「岐阜県保険医協会が寿命に関する調査結果を公表」とありますが、算出しているのは「死亡時平均年齢」です。ですが、「(平均)寿命」を計算するのであれば年齢別の死亡率が必要になります。なのに、(無料部分では)各年代の母数については触れられておらず、年齢別の死亡率を求めた形跡はありません。
ちなみに、「平均寿命」は「0歳の人の平均余命」ですが、未成年で開業医という人は存在しないでしょうから、「平均寿命」を算出するのは無理だと思います。
死亡時平均年齢について
「岐阜県保険医協会を死亡退会した」人の「死亡時平均年齢」を日本全体と比較していますが、保険医協会を退会するのは死亡時だけではないはずです。開業医なので定年退職はないにしろ、ある程度の年齢に達すれば医者を辞める日が来て、保険医協会を退会するのではないでしょうか? そうであれば70代以上の母数は減少するので、70代以上での死亡者というのも数としては減少します。
それなのに「死亡時平均年齢」という、単純に死亡時の年齢を平均しただけで意味があると思っているのでしょうか? まあ、思っているからやったのでしょうけど、「職業別の死亡時平均年齢」を計算したところで、日本全体と比べれば高齢者の比率が低くなるのは当然と思われ、高齢者の比率が異なる集団で「死亡時平均年齢」を比較してどうしようというのでしょうか。
年齢別死亡数について
これも同様に70代以上の比率は日本全体と比べて低いと思われ、年齢別死亡数で60代が一番多くなったとしてもなんの不思議もないのではないでしょうか?
まとめ
この記事を書いた記者もどうかと思いますが、そもそも「死亡時平均年齢」などを算出して驚いてみせた人たちは医者なわけで、医者にも物事をわかっていない人がいるんですね、という感想を抱きました。どんな職業でも、それこそピンからキリまでいるのでしょうが。
あと、この記事のデータを基に「医者は早死に」だとか「医者は長生きできない」だとか言うのはやめた方がいいと思います(そういう可能性を否定するわけではありませんが、そう主張するのであれば年齢調整死亡率を出して他の職業と比較すべきです)。
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