「医療クラスタ」の発言の疑問点 その13(画像診断医k 屋代香絵氏の発言について)

画像診断医k 屋代香絵氏(以下、屋代氏)の発言というか妊娠の検査と感染症のPCR検査との比較がおかしいのでまとめてみます。
「そもそも妊娠と感染症を比較するのはおかしい」とも思いますが、ひとまずそれは置いておきます。

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妊娠判定薬を使った検査とPCR検査の比較

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上記のように並べていますが、一つずつ内容を比較してみます。

検査で防ぐことはできません

妊娠判定薬で妊娠を防ぐことはできません。
検査でわかったときには、既に着床は成立しています。

PCR検査で感染を防ぐことはできません。
検査でわかったときには、既に感染は成立しています。

どちらも「そらそうよ」と思いますが、「で、何を言いたいのですか?」という疑問が湧いてきます。
これが、例えばピルとの対比で「(ピルでは妊娠を防ぐこともできるが)検査では防げない」という説明ならわかりますし、「検査では防げない」を枕にして何か言うのであればわかるのですが。
「PCR検査を拡充すべき」と言っている人の多くはそれで検査を受けた人の感染が防げると思っているはずもないですが、もしかしたら一部そう思い込んでいる人がいて、そういう人の相手を多くしているためこんな当たり前のことをわざわざ書いたのだとしたらお気の毒とは思います。それとも、「PCR検査を拡充すべき」と言っている人はそれで検査を受けた人の感染が防げると思っていると思い込んでいるのでしょうか?

事前確率を考えましょう

性行為経験のない人まで妊娠判定薬を使うのはお勧めしません。
事前確率を考えましょう。

事前確率の低い人までPCR検査を使うのはお勧めしません。
事前確率を考えましょう。

これにはいくつか問題があって、まず妊娠の方では「性行為経験のない人」という例を出しているのに対し、PCR検査の方では具体的な例は出さずに「事前確率の低い人」としていることです。
「事前確率の低い人へのPCR検査は、性行為経験のない人に対して検査するのと同様の行為である」と思わせたいのだろうと思いますが、そもそも屋代氏の考える「事前確率の低い人」というのはどういう人ですかね?
「性行為経験のない人」と並べるのであれば、「感染者が出ていない地域に住んでおり、感染者が出ている地域に行き来した人との接触歴がない人」ぐらいの感じになりますが、屋代氏の考える「事前確率の低い人」というのはそうじゃないと思うんですよね。
屋代氏は追加のツイートで、

x.com

濃厚接触者追跡やそれに準じる検査は大切で、3個めだいじ。今はデルタだし安全マージンとって濃厚じゃない接触者も調べるべきで、抗原検査の有用性が増してます。

と書いており、屋代氏の考える「事前確率の低い人」は「感染者との接触歴がなく無症状の人」だろうと思われます。ですが、感染経路不明の感染者がかなり多い現状で、それを「性行為経験のない人」と並べるのはあり得ません。悪質な印象操作です。
また、今回の話とは直接は関係ありませんが、デルタ以前から「濃厚ではない接触者」も検査するのは最低ラインと考えるべきであり(参考:新型コロナウイルス感染症の検査対象について 広島東洋カープの事例から考える)、そこらへんの認識も「検査抑制」がにじみ出ていると思います。
そして、妊娠しているかどうか検査するきっかけって、多くは生理が遅れているとか体調に変化が出たとかなのでは? 「ちゃんと生理が来ている人まで妊娠判定薬を使うのはお勧めしません」とするのが自然な気がしますが、「性行為経験のない人」としたのはそうした方が「検査する意味がない」という印象を強くできるからというのと、「ちゃんと生理が来ているのに」としてしまうと「無症状感染者は無視するのか」「無症状感染のある新型コロナウイルス感染症とは比較できない」と言われるからでしょうか。

早めに検査を受けましょう

身に覚えのある人は早めに妊娠判定薬を使いましょう。
早期からの経過観察は母児の健康に有用です。

症状のある人は早めにPCR検査を受けましょう。
早期にわかり隔離すれば感染拡大を防げる可能性があります。

妊娠の方で「身に覚えのある人」というのは、流れから「性行為経験のある人」ということになると思いますが、上でも書いた通りそれだけでは普通検査しませんよね? 「生理が来ないなどの変化があった上で、身に覚えのある人」とすべきと思いますが、前で「性行為経験のない人」とした手前、「身に覚えのある人」としたのでしょうか。
それに対して「症状のある人は早めにPCR検査を受けましょう」は、「身に覚えのある人」が「性行為経験のある人」であるとすると、それに合わせるなら「症状のある人」ではなく「感染者と接触した人」とすべきで、この比較は間違いですし、屋代氏の言葉を使うなら、前の「事前確率の低い人」に対して「事前確率の高い人」とすべきです。また、新型コロナウイルス感染症で注意すべきは無症状でも感染させることで、屋代氏も追加のツイートで「濃厚接触者追跡やそれに準じる検査は大切で、3個めだいじ」と書いていますが、「症状のある人(の検査)」に「濃厚接触者追跡やそれに準じる検査」が入っているとは思えません。さすがにそれは「事前確率の高い」ということで後付けで含めたのでしょうが、「事前確率」のアピールがしたかっただけでこれについては深く考えずに書いたんですかね。ぐだぐだです、

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妊娠に例えて考えてみる

屋代氏は妊娠の検査との比較を不適切な形でしましたが、新型コロナウイルス感染症関連の出来事を妊娠関連の出来事に例えて考えてみようと思います。
(感染状況や流行している変異ウイルスの種類によって変わるとは思いますが、おおざっぱなイメージと思っていただければ)

妊娠:感染
性行為経験のない人:感染者が出ていない地域に住んでおり、感染者が出ている地域に行き来した人との接触歴もない人
避妊具ありで性行為をした人:感染者が出ている地域で、マスクを着用し、密を回避しつつ人と接触した人
避妊具なしで性行為をした人:感染者が出ている地域で会食をした人、感染者と接触した人
生理が来ない:発熱などの症状が出る(別の原因で症状が出た可能性もあり、検査を受けないと判断できない)

「性行為:感染者との接触」とするのがすっきりするのですが、接触した相手が感染者かどうかわからないことが多いのでこうしてみました。
ここで無症状感染者に該当する状況がないのですが、無理に考えると「妊娠しているけど生理は来ているし体調変化もない」ということになると思います。
もし妊娠しても何も変化が現れないこともあるとしたら、「身に覚え」があったら生理が来ても検査を受けたくなりますよね? 妊娠であれば通常は明確に「身に覚え」があるでしょうが、新型コロナウイルス感染症では接触した人が感染者だった場合がそれに該当するわけです。今の東京、あるいは日本の感染状況で、「事前確率が低い」と言える人がどれくらいいますかね?

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まとめ

「事前確率の低い人への検査はすべきではない」という印象を与えたくてこんな比較をしたのだと思いますが、無理筋ですね。
やはり妊娠と感染症を比較するのはおかしいと思いますし、妊娠ではなく性病と比較すればよかったのではないかと思います(感染の仕方は全然違いますけど)。それだと印象操作ができないのかもしれませんが。
そもそも、東京では陽性率が20%を超えているのに、なぜ今こんな主張をするのか理解できません。誰がどう見ても検査は足りていないのに。

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